![]()
センス・オブ・ワンダーのおぼえがき

「センス・オブ・ワンダー」という言葉があります。
自然に触れたときにふと立ち上がる、
名前のつかない驚きや、静かな感動のこと。
この言葉を世に残したのは、
アメリカの生物学者のレイチェル・カーソンさん。
彼女の同名のエッセイは、
自然を「守るべき対象」として語る前に、
まず「好きになること」「不思議だと思うこと」を
大切にしていました。
最近(といっても、ここ数年の話ですが)、
その『センス・オブ・ワンダー』に
写真家の川内倫子さんの写真を添えた文庫版が
新潮文庫から出ています。
(冒頭の写真がそれですね、ジャケから素敵!)
ページをめくるたびに、
世界の輪郭が少しやわらかくなるような感覚を覚えました。
とっても好きな一冊です。
また話は飛んで、新潟県のとある地で行われた、
国立公園のシンポジウムに参加したときのこと。
鳥類保護を専門とするN先生の講演が、
とても印象に残っています。
鳥類の不思議な生態について語るその口調は、
「説明」や「知識」というよりも、
対象への畏敬とリスペクトに満ちていて、
まるでひとつの物語を聞いているようでした。
講演の最後、N先生はその時間を
「これはまさに、レイチェル・カーソンの言う
『センス・オブ・ワンダー』です」
という言葉で静かに包み込みました。
ああ、と思いました。
世界が美しく見えている人たちは、
まず世界に驚き、感動し続けているのだ、と。
そんな体験や読書の記憶にインスパイアされて、
わたしたちのSense of Wonderというコーヒーが
生まれました。
エチオピアの、華やかな浅煎り。
ひと口含むと、これまで気づかなかった世界の側面が、
ほんの少しだけ輪郭を帯びて見えてくるような感覚があります。
世界という物語の中で読み落としていたページがあったことに
気づいてちょっとびっくりしつつわくわくする…
なんていうと少し詩的すぎますね。
ともあれ、香りや酸味が、なにかを主張するわけではなく、
ただ「こんな世界もあるよ」とそっと示してくれる。
この一杯が、あなたの中に眠っていた
センス・オブ・ワンダーを、
少しだけでも解放するきっかけになれば。
世界が、昨日よりほんのわずか好きになる。
そんな時間を想像しながら、焙煎しています。
text by Masuda (Silent Field Coffee – Roaster / Director)
