エチオジャズと、コーヒーと

エチオピアの豆を焙煎していると、
いつも少し不思議な感覚になります。

華やかで、明るい。
フローラルで、柑橘のような酸が立ち上がる。
それでいて、洗練されているのに、都会的すぎない。
軽やかなのに、地に足がついている感じですね。

Sense of Wonderに使っているエチオピアの浅煎りは、
まさにそんな味わいを持っています。
テスト焙煎後のカッピングでほんのり香るレモングラスのような風味に
手応えを感じたのを覚えています。

そして、この素朴と洗練のバランス感覚、
どこかで知っているなと思っていました。
その正体が、エチオジャズでした。

エチオジャズは、
1960〜70年代のエチオピアで生まれた音楽です。

エチオピアの伝統音楽をベースにしながら、
ジャズやファンクの要素を自然に取り込み、
とても独特な質感を持つ音楽として育っていきました。

代表的なアーティストとして知られているのが、
ムラトゥ・アスタトゥケです。

彼の音楽は、フォークロア的でとてもアーシー。
旋律やリズムには土地の匂いがありながら、不思議と野暮にならない。

素朴なのに、洗練されている。
プリミティブなのに、知的。

そのバランス感覚が、
エチオピアのコーヒーとよく似ていると感じます。

エチオピアの浅煎りコーヒーも、
ただ明るくて華やかなだけではありません。

クリーンで軽やかな印象の奥に、
風土に根ざしたアーシーな余韻がはなやかに広がる。

派手に主張しないけれど、記憶に長く残る。

それは、
エチオジャズが踊らせるための音楽ではなく、
時間や風景に寄り添う音楽であることとも
どこか重なります。

エチオピアは、コーヒー発祥の地でもあります。

だから、エチオジャズとエチオピアのコーヒーは、
同じ風土感覚から生まれた表現なのかも…なんて考えたりすると
また面白いですよね。

どちらも自然との距離が近く、アーシーで、
でも人懐っこさのような温かみがある。

外の文化を受け入れながら、
自分たちのリズムを失わない。

Sense of Wonderの浅煎りを飲んでいると、
そんな在り方がふっと重なります。

コーヒーを飲みながら、
音楽を流しながら、
その土地の空気に少しだけ身を預ける。

そんな時間に寄り添う一杯として、
Sense of Wonderがあったら嬉しいなと思っています。

あ、冒頭の画像は、前述のムラトゥ・アスタトゥケが
イギリスのバンド、ザ・ヘリオセントリックスと制作した
“Inspiration Information”というアルバムのジャケットです。

エチオピアのフォークロアを感じさせる旋律と、
モダンで知的なグルーヴが自然に溶け合った一枚。
ジャケットもとっても素敵。

エチオピアの浅煎りと一緒にぜひエチオジャズを。

text by Masuda (Silent Field Coffee – Roaster / Director)