友人の本質、私信|ゲストライター

text by Ryuta Kasai(本と豆料理 豆千 店主)

下衆な人間なので、
下品な友人がいます。

少しばかり癖の強いそいつから、
久方ぶりに連絡が来たのはロースタリーを始めたと言うお知らせでした。



高校からの付き合い。

やり取りの語尾に性器の名称やワイヒーな言葉、
隠語を付ける関係性は変わりません。

変わったのは放課後の教室でのやり取りが、
卒業とともにショートメッセージ、
そしてEメールになり、
やがてSNSのDMと、
コミュニケーションツールの変化ぐらいでしょうか。

あとはお酒のダメージが
3日くらい続くことかと思います。

なんて風に歳を重ねながらそれぞれの道を歩み、
私は会社勤めをしながら週末に飲食系書店を営んでおります。

「ビールが呑める大人の図書室」

がコンセプトの、
有り体に言えばブックカフェみたいなお店です。

メニューにはもちろんコーヒーもあり、
いずれオリジナルブレンドを扱いたかったので、
彼からの連絡はまさによき知らせでした。



三十年来の付き合いですので話も早い早い。

まずは定番の3種を取り寄せ、
そこから好みを伝えてうちのお店のオリジナルを
ブレンドしてもらうことになりました。

浅煎りの『センス・オブ・ワンダー』は、
すっきりと丸みのある味わい。
山奥にある渓流、黒く湿った土の香りと清冽な空気を思わせます。

中煎りである『マウンテンドライブ』を口に含めば、
驚くほど自然に身体に入ってきます。
登山道で足を止め、大きく息を吸い込む感覚に近いでしょうか。

深煎りは『ジャーニー・ウィズイン』、
しっかりした味わいのあとには微かな余韻。
親しい人たちとコテージで散々呑み語らったあと、
眠る前に甘いものと一緒にゆっくり頂きたくなる、
そんなローストでした。

(ここまで書いたあとにあらためて彼がサイトに掲載している紹介文を読みましたが、
 どれも表現が近くて、ちょっとこの関係性に気持ち悪くなりました)

癖のある友人の焙煎ですから、
味わいや香りも強めかと思っていました。

それがどれも透明感があって、
普段の彼が発するお下劣大百科な言葉は表層であり、
本質は静かで純粋な男なのではないかと気付いたのです。

焙煎されたコーヒーを飲みながら、
この長い友人関係について見え方が変わるなんて
まるで想像していないことでした。

❋❋❋

そんな訳でお店用のオリジナルブレンドは、
深煎りをベースにした甘味と合うやつ希望です。

完成したらうちのお店でゆっくりビールを呑んで、
あんこのマスカルポーネ添えにコーヒーを合わせ、ダラダラくだらない話をしましょう。

text by Ryuta Kasai(本と豆料理 豆千 店主)
埼玉県川口市にあるお酒の飲める書店”豆千”店主。
柔和な人柄ながら飲酒での失態と奇行はもはやライフワーク。
その確かな書籍選びのセンスと豆料理を中心にしたフード、
そしてもちろん呑助の夢を叶えるお酒のラインナップで
週末の昼下がり〜夜半のオアシス(アルコール分多めの)を切り盛りしています。

【本と豆料理 豆千】
埼玉県川口市本町3丁目3−16 オーパスホームズ川口 101
https://note.com/mamesen